うつ徒然diary

鬱になって行く過程をせきららに書きました。その後、治療の為に自分なりにもがきます。

医者

翌日父親に付き添ってもらい、近所の心療内科へ行く。小さな病院で個人経営しているらしい。

40代後半の白髪まじりで、眼鏡をかけた肥満気味の男性の医者だった。

なかなかの対応だった。まず自己紹介をしない。そしてパソコンを見たままで、目も合わせず

「予約の電話では入院したいとの事ですが、ここには入院施設はないですよ。大丈夫ですか?」

といきなり言ってきた。

[ハズレだな]僕は心の中で舌打ちをする。

もう一人会話をタイピングしていた女性がいた。こちらも挨拶はない。

ここでぶちきれて、去るのは簡単だが、もう1つの心療内科は遠く、予約で2週間待ちだと言われていた。親に負担をかけたくない。僕は大きく深呼吸をして心を落ち着ける。

「大丈夫ですよ。自己判断ですが一番悪い時は脱したので。入院はしなくてもいいです。」

「そうですか。」

やっと身体をこちらに向けて、目を会わせてきた。[診断してやってもいいぞ]そう言っている気がした。

自分の事を語るのは3回目なので、スムーズに話せた。医者も邪魔はしてこなかった。

「前の病院でも薬を処方してもらったんですが、今では大分安定しているので、もう少し弱い薬がいいです。」

「それでは漢方薬にしましょう。他になにか聞きたい事はありますか?」

「ないです」

診察は終わった。最後に医者が

「初診でしたので時間を取りましたが、次回からは5分ぐらいで終わってもらいます。」

と言ってきた。

「分かりました。ありがとうございました。」

自分も接客を仕事にしてきた。だからよく分かる。この医者では患者は安心しないだろう。接客が下手というより、患者を見下している。冗談ではなく、田舎の病院にはこういった医者が多い。[新宿に戻りたい]そう思った。

鬱が悪化しそうだった。

友人

もう一人、母親との窓口になっていたY君にも連絡をする。

「ああ、Y?色々ご迷惑おかけして、本当ごめん」

「本当だよ。お前マジで心配したんだからな!かんべんしてくれよ~」

久々に聞いた懐かしい声。同じ修行をして、釜の飯を食った仲だ。お互いプライベートでもよく行動し、最初の店を辞めた後でも、よく遊んでいた友人だった。

「色々手間かけてすまんな」

「いいよ、いいよ」

話したい事はたくさんあるはずだが、電話では伝え切れない。

「その内会いに行くよ」

「あ、ああ、分かったよ」

そこで電話を切った。

自分を心配してくれている、遠く離れた友人。本当にバカな事をした。

「はぁ~~~~~」

後悔と安心感で、長い長いため息をついた。

報告

その後お風呂に入り、久しぶりのベッドに潜り込んだ。柔らかい。腰が痛くない。

久しぶりに話をして疲れた。言葉がなかなか出てこない。日記をつけていて本当に良かった。

会社の人間と話すのはつらい。先輩に電話をかける時、手が震えた。不在らしく朝折り返しの電話があり、母親が受けて事情を説明したらしい。これで会社のスタッフ全員に連絡が行くだろう。

「直ったら、またいつでも戻ってきてください。待ってますよ。」

先輩はそう言ったらしい。母親には、その言葉はしらじらしく聞こえたらしい。その前のやり取りから何か感じたらしく、

「なんか、あの人好きにはなれないわ。」

と言っていた。

先輩からしたら僕は疫病神でしかない。借金をして、自分の店を持つ。家族とスタッフを背負わなければならない。僕は役不足で実力もなかったのだ。その上この騒動。幸先悪すぎである。万が一、僕が死んでいたらもっと状況は悪くなっていただろう。業界の噂は早い。

もう一人心配してくれた後輩に連絡した。結婚を間近に控えていて、わざわざ結婚式に招待してくれていた。連絡先をメモしていた。

事の経緯と結婚式に出なかった事を詫びた。

「いいですよ、いいですよ。本当に無事で良かった。元気になったら遊びに来てください。」

ありがたい言葉だった。