a.m.5:00
「何でもっと早く話さなかった。」
「すいません、言い出せなくて」
沈黙が続く。
「この事は誰かに話した?」
「スタッフの人には心療内科に行った事は話しました。」
「とりあえず、親方には話さないで。俺から言うよ。」
「はい。」
そのまま別れ、着替える為に店に帰りました。何もしていないのに疲れきっていました。
お世話になっている店で最後の日、営業を終えスタッフで飲み会に行きました。二件目は焼き肉屋に行き、楽しく飲みました。
家に帰りベッドの上でまどろんでいた時、先輩から電話がきました。
「お疲れ」
「お疲れ様です。」
「お前のこれからだけどさ」
「はい。」
「とりあえずオープンして年末ぐらいまでは手伝ってよ。代わりが入るまではいてよ」
「すいません。無理です。」
「こっちも困るよ。お前をあてにしていたんだから。ただいるだけていいからさ。今辞めると親方に迷惑がかかるだろう。だから俺の所に所属してしばらくしてからやめればいいじゃん。その間に人は探しとくからさ。」
僕の病気の事は全く考えていない、冷徹で合理的な考えが胸に刺さります。
「約束したよな、辞める時は代わりの人を見つけるって。勝手過ぎるだろう」
「その通りですが、本当に無理です」
「シンプルに考えようか、代わりの人を見つけられるか?」
「無理です」
「じゃあお前がやるしかないんだよ。簡単な話だろう?」
長い沈黙。
「黙っててもしょうがないよな」
「はい」
「お前ができるようになるまで面倒見てやるから」
「やっぱり、無理です」
「やるよな?」
「うう…」
説得は続きます。そして…
「分かりました。やります。」
「そうそう、それでいいんだよ。親方には病院の事黙っといて。ややこしくなるから。それじゃよろしく。」
電話が切れる。
そして僕は冷蔵庫から缶酎ハイをとり出し、睡眠導入剤2週間分を一気に飲みます。
もう楽になりたい。考えた事はそれだけでした。
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