死へと向かう
目覚めるといつもの僕の部屋だった。死んでいないらしい。起きると吐き気と頭痛がした。足下がふらつき、上手く歩けない。這いつくばってトイレに行って用を足し、気を沈めた。
水を飲みながら、携帯を確認すると翌日のa.m.2:00だった。20時間程昏睡していたらしい。着信履歴も凄い量だった。先輩のラインの文字が見える。
[辞めるなら辞めるでいいけど、挨拶ぐらいしろよ]
僕は携帯の電源を切った。
僕の部屋は8階にあり、そこの窓を開け下を見下ろす。[飛び降りは嫌だな]そう思うと急に恐ろしくなり、下着と靴下、Tシャツをバッグにつめ込み逃げる様に部屋を出た。
外は小雨が降っていた。駅に向かって歩いていると腹が減ってきた。
「こんな時なのに腹が減るのかよ。」思わず嘆いていた。近くの松屋に入り定食を食べた。一息ついてこの後の事を考える。死ぬしかない。でもどこでどうやって?
そんな時北陸に東尋坊という自殺の名所がある事を思い出す。海で、美しい場所で、死ぬ。目的地が決まった。
金をATMでおろし、東京駅に向かった。タブレットで道順を調べる。芦原温泉駅からバスがでているらしい。10:10発のひかりで福井へ向かう。米原で特急しらさぎに乗り換える。不思議と心は穏やかだった。焦る必要もなく、物事を考える事ができた。昏睡したおかげだ。
駅に着いた。空は快晴で暖かい。空気も気持ち良い。近くに山が見えた。
[首吊りもいいな]
そう思い、予定を変更して山へと歩いた。地元の下校途中の小学生に挨拶されてビビった。どう考えても不審者だと思うが…
風も気持ちよく、のんびり歩いた。林を見つけて、なかに入り、ちょうどよさそうな木を探した。枝が太く、僕の背たけより高い位置にあり、体重も支えられる木はなかなか見つけられなかった。
なんとか探しだし、そこで遺書を書いていないことに気が付いた。
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